空白の音に耳をふさぐ
それが葉切りだったのかもしれない。
アリエッタが死んで、ラルゴが死んで、リグレットが死んで。
そして目の前で、シンクが死んだ。
レプリカは死ぬと音素乖離して後が残らない。
シンクが最後にいた所を撫でても、手に触れるのは砂ばかり。
結局……最後まで、言うことが出来なかった。

突きつけられている槍を気にせずに立ち上がると、痛みが走った。
頬が切れたようだ。
「総長のところに案内します」
ディストとアッシュはどうしているのだろう。
付いてこない気配に振り向く。
「何か?」
一様に驚いたような疑うような表情をしていたが、槍突きつけていた死霊使いが白々しく微笑んだ。
私は私の出来る仕事をしているだけなのに、よくわからない。

レプリカの白い建物を抜け、アッシュの死を知り。
素直に悲しむラルゴの娘を見て。
階段を上り白い神殿に上がって行く。

ここからはヴァンと彼らの舞台だ。
口をはさむことは何も無かった。誰も何も聞かなかった。
だからわからなかった。
ヴァンが勝てば未来はおのずと決まる。
けれど彼らが勝ったらどうすればいいのか。誰もいない神託の騎士団に戻るのが良いのか、まっさらな私にふさわしく同じ者たちの所へ行くべきか。敵だった彼らに連行されるべきか。ここで皆が消えた場所で同じく滅ぶべきなのか。
戦闘を見ながらも迷い、そして答えは見つからなかった。

そいして私の道は赤い目の人の言葉と、黄色い髪の人の手によって指し示めされたのだった。


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